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第35回日本舌側矯正歯科学会学術大会に参加しました〈前編〉

京都駅のイメージ写真

第35回日本舌側矯正歯科学会学術大会に
参加しました〈前編〉

2024/01/29

京都駅のイメージ写真

みなさんこんにちは。総院長の東海林です。
2023年11月23日(木)に開催された第35回日本舌側矯正歯科学会学術大会・総会に参加してまいりました。
私は一般口演での発表を行い、他2名がポスター展示に参加いたしました。

今回は「診断力を高める-Top down treatment-」というテーマのもと、各分野の先生方がそれぞれ専門的な視点に立った意欲的な口演および発表をされていました。
その中でも冒頭の3名の先生方による特別講演は、いずれも含蓄に富んだ内容となっており、大変勉強になりました。

若年者に増えている「顎口腔機能障害」

2大口腔疾患として有名な虫歯と歯周病は、予防の概念が広まったこともあり、発症数が減少傾向にあります。
とりわけ虫歯の本数に関しては、ここ数十年で激減したといっても過言ではありません。
そんな中で改めて問題視されているのが若年者に多く見られる「顎口腔機能障害」です。
さまざまな要因が組み合わさることで、噛む・飲み込む・しゃべる・呼吸をする機能が傷害される病態で、その背景には生活習慣の乱れなどが存在しています。

スタディグループ筒井塾を主催されている筒井照子先生は、矯正歯科治療を行う際にもそうした機能障害を内蔵しているかもしれないという認識の中で、診査などを実施すべきであるとおっしゃっていました。
具体的には、不正咬合の原因が歯列内に限局しているのか、あるいは上下の顎間関係や顎関節、患者さんのメンタルにまで及んでいるのかどうかを見極める必要があります。

そこで重要となるのが責任分担の明確化です。
矯正治療というと歯科医師が治療計画を立て、装置を固定し、来院の度に調整を加えるなど、完全に医院主導で行うものと考えられがちですが、そうした手法には限界があります。
そもそも患者さんが本当に求めている審美性や機能性を実現するのは困難といえるでしょう。
とくに顎口腔機能障害は患者さんの生活習慣とも密接な関連が認められることから、矯正治療に対してお互いが責任を持つ部分、努力する部分をあらかじめ明確にしておくことが大切とおっしゃっていました。

不正咬合の原因を根本から洗い出して治療するとなると、フルマウスの咬合再構成が必須となります。
正常な歯列弓から逸脱している歯だけを本来の位置に戻すのではなく、全身の中の最適な下顎位を見つけた上で、そこに向かって咬合全体を再構成していくことが大切といえます。

第35回日本舌側矯正歯科学会学術大会の案内板前にて1枚

術前診断の重要性について

日本臨床歯科学会(SJCD)の木原敏裕先生は 術前診断の重要性を補綴的な観点から説明されていました。
補綴治療を行っていく中で大きな妨げとなるのは「歯列不正」だそうです。
残念ながら、歯並び・噛み合わせが悪い状態では何を行ったとしても崩壊の道をたどるのは明白であるそうです。
逆に言うと、歯列さえ整っていれば、補綴を成功させることは難しくなく、安定した良い状態を保ちやすくなるそうです。

そこで木原先生は、咬合、補綴、矯正、インプラント、ペリオ、エンドを個別に考えるのではなく、それらを総合的に捉えて診断することの重要性を強調されていました。
確かに、日々の臨床では保険診療に基づいた経験上の診断が主となっており、本当の意味での診断はなされていないのかもしれません。
木原先生がおっしゃるような総合的な診断を行えるようになれば、矯正や補綴、エンドなど、あらゆる分野での治療で長期に渡る安定した状態を維持しやすくなることでしょう。

再生療法と矯正歯科治療の深い関係

JIADS(Japan Institute for Advanced Dental Studies)の理事をされている浦野智先生は、「再生療法と矯正歯科治療の深い関係」というテーマで、歯周病のステージⅣにおける矯正歯科治療の重要性についてお話いいただきました。
歯周病のステージⅠ~Ⅲまでは原因除去療法で対処できるが、ステージⅣになると先天的、全身的、2次的な変化が大きく関わるため、他分野との連携が必須となるそうです。
その代表例が矯正歯科治療であり、歯並び・噛み合わせの問題を根本から改善することで、先天的な歯周病リスクを取り除けます。

逆に、成人矯正においても歯周病的観点を持ち、再生療法と組み合わせることで、矯正歯科治療でもより良い結果が得られるようになるとのことでした。
個人的にもそれによって矯正の幅が広がることは間違いないと思います。

技工セッション

歯科技工士のイメージ画像

今回の学術大会で私が最も注目したのは技工セッションです。
当院で行っているリンガルブラケット矯正法とIn Office アライナー型矯正装置を併用した矯正歯科治療とも関連が深いこともあり、興味深く聞かせて頂きました。

■アナログとデジタルの融合

表参道高柳矯正歯科の高柳譲司先生は、「ハーフデジタルセットアップ」という独自の手法について説明されていました。
まず、舌側矯正というのは、いわゆる表側矯正とは異なるプロセスで診療が進めていくことになります。
なぜなら舌側歯面の形態は、唇側よりも複雑だからです。
そこで必要となるのがセットアップモデルの製作です。

リンガル矯正では、ブラケットポジションをあらかじめ決める必要があるため、セットアップモデルを作るのですが、アナログで行うと作業は煩雑となり、手間と時間がかかります。
技工士の技術レベルによっても仕上がりに大きな違いが現れるというデメリットも伴います。

近年は、口腔内3Dスキャナーを使用したデジタル印象でセットアップモデルから、インダイレクトボンディングのコアまで作成することができるようになってきましたが、修正が必要となった場合は、その場でブラケットポジションの変更を行えるアナログセットアップの方が優れているといえるでしょう。
模型の噛み合わせを実際に確認できる点もアナログセットアップのメリットです。
つまり、現状においてはデジタルとアナログを融合させたハーフデジタルセットアップの方が利便性の高い舌側矯正を実現できるということなのです。

かなお矯正・小児歯科クリニックの金尾晃先生も「Digital-Based Lingual Orthodontics」という題目で、デジタル技術を活用した舌側矯正装置の技工操作について発表されていました。
3Dプリンタなどのデジタルデバイスを利用することで、予測模型や矯正装置、補助器具の製作にも作業効率と品質の同時向上につなげることができるそうです。

まとめ

このように、第35回日本舌側矯正歯科学会学術大会は「診断力を高める」というテーマで、さまざまな分野の先生方が精力的な発表をされていて、とても良い刺激を受けることができました。

次回は、私自身の口演内容や当法人のスタッフによるポスター展示についてお伝えしたいと思います。
関心のある方はぜひ次回もご覧ください。
>>次回「第35回日本舌側矯正歯科学会学術大会に参加しました〈後編〉」

学術大会参加メンバーの集合写真

日本舌側矯正歯科学会学術大会の参加メンバーで集合写真を撮影

学会学術大会のポスター発表

次回は口演内容やポスター展示についてご紹介します。

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