「日本顎変形症学会総会・学術大会」に
参加しました〈後編〉
こんにちは。総院長の東海林です。
前回に引き続き先「日本顎変形症学会総会・学術大会」での知見を共有いたします。
今回は2日目の内容から気になるトピックを3つお話させていただきます。
■顎変形症治療における顎関節機能
顎変形症の治療では、外科手術によって顎の骨を切って動かすため顎関節への配慮が必要となります。
顎関節とは、上下の顎をつなぐ関節で、口を開閉したり左右に動かしたりする際に重要な役割を果たします。
しかし、顎変形症ではこの関節にも異常が生じることがあります。
例えば以下のような場合です。
・顎関節円板障害
関節内部にある円板(クッション)がずれたり裂けたりすることで、関節雑音や開口障害などを引き起こす。
・変形性顎関節症
関節内部や周囲の組織が摩耗したり変形したりすることで、関節痛や開口障害などを引き起こす。
顎関節機能の低下は、顎変形症の原因にもなりうるだけでなく、治療の際にも注意が必要です。 顎変形症の治療は、歯科矯正治療と外科手術があります。 歯科矯正治療では、必要に応じて抜歯などを行いながら徐々に噛み合わせや顔の形を改善させていきます。 外科手術では、骨切り術で、骨を切除して移動させることで噛み合わせ顔の形を改善させます。
顎関節機能の低下している場合そのことによって顎関節への負担が増える可能性があります。 そのため、治療前には顎関節の検査や診断が重要です。 また、治療中や治療後には、運動療法や物理療法などで顎関節の可動域を拡大したり、滑液循環を促進したりすることが必要です。 これらの治療方法は、顎関節機能の回復とそれに伴う痛みの改善に効果的です。
顎変形症治療における顎関節機能は、噛み合わせや顔の形だけでなく、口腔内や全身の健康にも影響する重要な要素です。 そのため、形成外科や矯正歯科など、さまざまな診療科が連携しながら治療を行うことが大切です。
また、患者様自身も日常生活で顎関節への負担を軽減する工夫をしたり、適切なケアをしたりすることが必要です。
■顎変形症と睡眠時無呼吸症候群の関係と治療法
次に睡眠時無呼吸症候群についてです。
睡眠時無呼吸症候群も顎変形症と密接な関係があり治療の際には配慮が必要となります。
◎睡眠時無呼吸症候群とは
睡眠時無呼吸症候群とは、睡眠中に気道が閉塞し、呼吸が止まったり浅くなったりすることで、睡眠の質が低下し、日中の眠気や倦怠感などを引き起こす病気です。重度の場合は心臓や脳血管などの重篤な合併症を引き起こす可能性もあります。
睡眠時無呼吸症候群の原因はさまざまですが、肥満や扁桃肥大など気道を圧迫する要因が多くあります。
また、飲酒や睡眠薬など筋肉を弛緩させるものもリスクを高めます。
◎顎変形症と睡眠時無呼吸症候群の関係
では、なぜ顎変形症と睡眠時無呼吸症候群が関係しているのでしょうか。それは、顎変形症によって下顎が後方に位置することで、喉の周りのスペースが狭くなり、気道が圧迫されやすくなるからです。
特に仰向けで寝ると、舌が下に沈みやすくなります。このとき、噛み合わせや歯並びのバランスが崩れていると、舌がさらに後方に落ち込み、気道を塞いでしまいます。これが無呼吸の原因となります。
また、下顎後退症は日本人に多いとされています。日本人は欧米人に比べて下顎が後退している傾向があり、睡眠時無呼吸症候群の発症率も高いと言われています。そのため、顎変形症と睡眠時無呼吸症候群は密接な関係にあると考えられます。
◎顎変形症と睡眠時無呼吸症候群の治療法
顎変形症と睡眠時無呼吸症候群の治療法は、原因や症状の程度によって異なります。一般的な治療法は以下の通りです。
・スリープスプリント療法
歯科で作製したマウスピースを装着し、下顎を前方に出すことで気道を広げる方法です。
・CPAP療法
鼻や口から空気を送り込む機械を装着し、気道を開放する方法です。
・外科手術
気道を圧迫する扁桃や脂肪を切除する方法や、下顎を前方に移動させる方法です。
・パルスサーミア
喉の粘膜にレーザーを当てて引き締める方法です。
これらの治療法はそれぞれメリットとデメリットがあります。
また、保険適用の有無も異なりますので自分に合った治療法を選ぶためには専門の歯科医師の診断や相談が必要です。
顎変形症は見た目だけでなく、健康面にも大きな影響を及ぼします。
特に睡眠時無呼吸症候群は重篤な合併症を引き起こす可能性があるため、早期発見・早期治療が大切です。
もし自分や家族に以下のような症状があれば検査を受けてみましょう。
◎睡眠時無呼吸症候群チェック
・いびきがひどい
・睡眠中に呼吸が止まったり苦しくなったりする
・起床時に頭痛や倦怠感がある
・日中に眠気や集中力低下がある
・アゴが小さく見える
・噛み合わや歯並びが悪い
■歯科治療とメタバースの関係について
最後はこちら、メタバースを利用した歯科治療という未来の治療のお話です。既に韓国など海外ではメタバースを利用した治療を行っている先生がいらっしゃいます。
◎メタバースとは?
メタバースとは、仮想空間での体験やコミュニケーションを指す言葉です。メタバースは、メタ(meta:超越した)とユニバース(universe:宇宙)という言葉を組み合わせた造語で、現実世界とは別の仮想世界を意味します。メタバースでは、VR(仮想現実)やAR(拡張現実)などの技術を使って、自分の分身であるアバターを操作して、さまざまな活動や交流ができます。
メタバースは、ゲームやエンターテイメントだけでなく、教育やビジネス、医療などの分野にも応用されています。
例えば、メタバース上でのオンライン授業や会議、ショッピングや観光などが可能になります。また、メタバースでは、自分の好きなようにアバターをカスタマイズしたり、自分の作ったコンテンツを販売したりすることもできます。
◎顎変形症治療とメタバースの関係
顎変形症の治療ではすでに外科治療の際の顎の位置決めなどに利用されているようです。
顎の骨を切ってしまうと元の位置や基準とする場所がわからなくなってしまいますが、
メタバースのような仮想空間ではその位置を残して記録しておくことが可能なのです。
これからどんどん様々なシーンで活用されて、より良い顎変形症治療が増えていくのではないでしょうか。
今後も顎変形症治療とメタバースの関係にも注目していきたいですね。
歯科におけるメタバースの活用事例を一部ご紹介します。
・歯科医療教育での活用
メタバース上で3Dモデルデータを操作し、講師から難しい上に最先端である治療法や症例の解説そしてVRを活用したトレーニングなどを受けることができます。
・治療シミュレーション
歯科診断・治療では、患者さんの口腔内をスキャンして作成された3Dモデルデータをメタバース上で分析・構築し、VR/ARに変換することで、内外の構造を立体的に把握し、治療方針や手順をシミュレーションすることができます。
・コミュニケーションツール
歯科医師間のコミュニケーションや情報共有にもメタバースが活用されています。例えば、遠隔地にいる医師とメタバース上でカンファレンスを行ったり、3Dモデルデータや手術動画などをメタバース上で共有したりすることができます。
これらは一例ですが、歯科とメタバースの関係はまだ発展途上です。今後はさらに多様なシーンでメタバースが活用される可能性があります。
渋谷矯正歯科では矯正をご検討されている方にはそれぞれに合った方法を一緒に模索しながらご説明いたします。
また、外科矯正治療の場合も他科と連携して患者様にとってのベストを求めて伴走します。
ご質問などもお気軽にどうぞ。
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