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綿引淳一先生の「O-PROセミナー」に参加しました〈後編〉

ビジネス手帳とノートパソコンとペンのイメージ画像

綿引淳一先生の「O-PROセミナー」に
参加しました〈後編〉

2023/08/24

ビジネス手帳とノートパソコンとペンのイメージ画像

こんにちは。総院長の東海林です。
前回に引き続き先「O-PROセミナー」での知見を共有いたします。

骨内欠損(骨縁下欠損)部への
外科後の矯正移動による歯周組織への影響

奥歯の構造のイラスト
本セミナーでは、骨内欠損(骨縁下欠損)部への外科後の矯正移動による歯周組織への影響についてもご説明いただきました。これも「再生が起こらない派」と「再生が起こる派」の両論に分かれており、学会でも論争となっているトピックです。再生が起こらない派は、LJE(Long Junctional Epithelium)が生じて終わると主張していますが、再生が起こる派は、矯正移動でLJEの進行が抑制され、結合組織性付着が促進されると主張しています。

骨内欠損の形態は再生の結果に影響を与える

骨内欠損の形態は、再生の結果に影響を与えるようです。具体的には、治療前のDA(Defect Angle)が22°以下の場合、3mm以上のアタッチメントゲインが得られる確率が2.46倍以上に跳ね上がります。そこで有用なのが再生手術前に歯を骨内欠損部位へ矯正移動することです。そうした処置を施すことで、次に挙げるようなメリットが得られます。

メリット1:Defect Angleを術前に小さくできる

上段でも述べたように、Defect Angleが22°以下の場合は、3mm以上のアタッチメントゲインが得られやすくなります。つまり、再生手術前に矯正移動でDefect Angleを小さくしておけば、より効率良く歯周組織を回復しやすくなるのです。

メリット2:再生手術の成功率を向上させることができるかもしれない

3mm以上のアタッチメントゲインを獲得できれば、再生手術の成功率も大きく向上します。もちろん、これはあくまで可能性でしかありませんので、断定することは難しいです。

再生手術前に歯を骨内欠損部位へ矯正移動する処置には、メリットだけではなくデメリットも伴います。とりわけ以下の3点には十分な注意が必要です。

デメリット1:完全な感染源の除去を行っていないため、歯周炎悪化のリスク

再生手術前に歯を骨内欠損部位へ矯正移動するということは、感染源を完全に除去することは困難です。その結果、歯周炎悪化のリスクが生じます。これは術前・術後のケアを徹底することでカバーしなければなりません。

デメリット2:歯周炎の悪化によって歯間乳頭の低下するおそれが出てくる

1によって歯周炎が悪化すると歯間乳頭が低下するリスクが生じます。これは矯正による仕上がりに大きな悪影響が及ぶことでしょう。

デメリット3:歯間が狭くなるので、オペの際に歯間乳頭への血流が少なくなる

術前に歯を欠損部へと移動すると、当然ですが歯間が狭くなります。それは歯間乳頭への血流を抑制することにもなるため、手術への悪影響は避けられません。

このように、術前に矯正移動によってDefect Angleを改善することには大きなメリットが得られると同時に、デメリットも伴う点に注意しなければなりません。

ブラックトライアングルへの
各種対応法

人間の顎と歯の模型
臨床の現場でよく遭遇するブラックトライアングル。口元の審美性を大きく低下させる要因にもなるため、可能な限り改善したいものです。今回は、そんなブラックトライアングルへの対応法もいくつか選択肢をご提案いただきました。

オプション1:矯正治療で
歯根間距離を可及的に
狭くする IPRで狭くできる

ひとつ目の選択肢は「矯正治療」です。歯の矯正移動によって歯根間距離を可及的に狭くすることで、ブラックトライアングルの症状を改善できます。具体的には、IPRによって歯根間距離を縮めます。

オプション2:歯冠形態修正

二つ目の選択肢は「歯冠形態修正」です。ダイレクトボンディングやラミネートベニア、クラウンなどで歯冠の形態を修正します。欧米はラミネートベニアが主流となっています。ブラックトライアングルへの対応でもバンバン貼っているのは、大きなリスクがないためです。それにも関わらず日本人はなぜラミネートベニアを使わないのか、不思議に思われているようです。

オプション3:外科処置

三つ目の選択肢は「外科処置」です。歯間乳頭形成術(軟組織増生)や歯周再生術(硬組織増生)によってブラックトライアングルを改善します。

◎重度歯周病矯正患者のブラックトライアングル改善戦略

以下に、重度歯周病矯正患者へのブラックトライアングル改善戦略を掲載します。こちらは実際に綿引先生が治療されたケースです。CTG/結合組織移植術後にIPR&矯正移動で根間距離を近接化しています。

  • STEP 1:歯周再生【外科1】
  • STEP 2:圧下
  • STEP 3:結合組織移植(歯間乳頭形成術)【外科2】
  • STEP 4:矯正移動&IPRを併用した歯間距離の短縮【矯正】
  • STEP 5:歯冠形態修正

非抜歯矯正の限界と犬歯間幅径の維持に対する根拠

歯科矯正では1911年に「抜歯論争(Extraction debate in 1911)」が勃発しました。当時はAngle派の非抜歯治療が一般的に支持されていたのですが、その14年後の1925年に「歯槽基底論」という論文が発表され、環境は大きく変わります。
この論文により「矯正治療で骨(歯槽基底)の根本的な大きさや形を変えることはできない」、また、「歯槽基底を超えて移動された歯は後戻りする」との研究結果が提出され、非抜歯にこだわる治療が無理なことが明らかになったのです。

◎歯肉退縮リスクの高い患者は軟組織増生だけでは不十分

今回のセミナーでお話いただいた内容からも、硬組織増生術は矯正患者に対して歯肉退縮の予防として有効である可能性が高いことがわかっています。歯肉退縮リスクの高い患者さんの矯正治療においては、軟組織増生だけでは不十分であり、硬組織を含めた造成術が必要なのです。しかし、従来法は歯肉退縮の予防しかできない。そこで綿引先生が考案された「O-PRO」の有用性が浮き彫りとなります。

O-PROについて

O-PROとは、矯正歯科治療に最適化された歯周再生術です。矯正による歯肉退縮の予防のみならず、すでに存在している歯肉退縮に対しても再生が期待できる点が従来法と大きく異なります。
歯肉退縮はボーンハウジングマネジメントの入り口です。
O-PROは軟組織のプロファイルを意識した再生療法であり、患者さんの顔貌までデザインして変えることが可能です。そんなO-PROコンセプトは、矯正歯科学の抜歯・非抜歯診断の議論に終止符を打つことができるかもしれません。
「矯正は100年の歴史の中でその力を十分に引き出せていない」という綿引先生のお言葉が今も頭に強く残っています。私も今回のセミナーで得た知見を明日の診療からでも少しずつ活かしていきたいと思います。

先輩と一緒にカラオケで打ち上げしている写真

先輩方との3次会の写真。
カラオケでお疲れさま会をしました。

ラーメン屋の外観写真

締めのラーメンも
美味しくいただきました。

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