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綿引淳一先生の「O-PROセミナー」に参加しました〈前編〉

手帳とペンの画像

綿引淳一先生の「O-PROセミナー」に
参加しました〈前編〉

2023/08/17

手帳とペンの画像

みなさんこんにちは。総院長の東海林です。
先日、東京日本橋AQUA歯科・矯正歯科包括CLINICの綿引淳一先生による「O-PRO」のセミナーに参加してまいりました。O-PROは、綿引先生が提案する「矯正歯科治療に最適化された歯周再生術」です。
今回はそんなO-PROのセミナーで得た知見を2回に分けて、皆さんと共有したいと思います。

矯正治療は歯肉退縮を引き起こすのか?

セミナー会場の掲示物

セミナーでは始めに「矯正治療は歯肉退縮を引き起こすのか?」というトピックが取り上げられました。これは矯正医であれば誰もが悩む問題であり、矯正治療の黎明期から存在し続けている命題のひとつでもあります。私個人としては、どちらかというと否定派に属していました。もちろん、事実として矯正治療後に歯肉退縮を引き起こすケースはありますが、適切な方法で矯正を行えば、長期的な視点での顕著な歯肉退縮を防ぐことは十分可能だと感じています。けれどもそれはアメリカの研究論文などを読むと、必ずしも正しい考えではないということがわかります。
というのも、アメリカでは人口の50%程度が矯正治療を受け、そのうちの30%程度に歯肉退縮が見られるという統計データが存在しているからです。これは矯正治療が終了してから5年程度の経過を追ったデータであり、信憑性が高い数値であるといえるでしょう。そもそも私たちは患者さんの経過を1年程度しか追っていないことから、それだけで矯正移動による歯周組織への有害性を判断することは不可能なのです。

なぜ矯正移動が歯周組織に有害とする論文とそうでない論文があるのか

矯正移動が歯周組織に与える影響については、今も昔も両論存在しています。それは以下の挙げるような5つの理由があるからだと考えられます。

  1. 1)被験者年齢が若い
  2. 2)観察期間が短い
  3. 3)患者の歯肉の厚さによって結果が異なる
  4. 4)不正咬合自体がリスクファクターである
  5. 5)ボーンハウジングを超えた矯正移動の有無

こうした理由を考慮に入れずに、矯正移動が歯周組織に与える影響を一概に語ることはナンセンスといえるでしょう。綿引先生はこの中でもとくに患者さん歯肉と骨の厚さが治療結果を大きく左右すると考えています。そこで有用なのが「メイナードの分類(Maynard’s classification)」です。

メイナードの分類について

メイナードの分類は、歯肉退縮のリスクを示す指標です。歯肉と歯槽骨の厚みの状態によってType1〜Type4の4つに分類されます。Type1がもっとも低いリスク、Type4がもっとも高いリスクとされている。

  • Type1:歯槽骨が厚く、付着歯肉も十分にある (リスク低)
  • Type2:歯槽骨は厚いが、付着歯肉は少ない (リスク中)
  • Type3:歯槽骨は薄いが、付着歯肉は十分にある (リスク中)
  • Type4:歯槽骨が薄く、付着歯肉も少ない (リスク高)

この分類は絶対的な数値の比較ではありませんが、歯周外科処置の必要性を決定する上での有効な指標となります。例えば、遊離歯肉移植術(FGG:Free Gingival Graft)や結合組織移植術(CTG:Conective Tissue Graft)を行うことで、Type4にあたる部位をType3に変化させて、安定した歯周組織の環境を作ることが可能となります。

Watahiki’s classification(2020)

綿引先生は、矯正治療によって歯肉退縮を引き起こしやすい歯周組織の評価基準としては、メイナードの分類は不十分とおっしゃっています。具体的には、Type4をさらに細分化する必要があるため、「Watahiki’s classification(2020)」という独自の基準を提唱するようになりました。Watahiki’s classification(綿引の分類)は、メイナードの分類のType4に当たるケースをさらに3つのクラスへと細分化しています。
数値が大きくなるほど、歯周組織の状態は悪くなり、クラス3では骨も歯肉ありません。そうした患者さんごとの歯周組織の状態の違いを明確に定義しないまま、さまざまな論文を比較したところで、「矯正治療は歯肉退縮を引き起こすのか?」という命題に答えることは不可能といえます。「矯正移動が歯周組織に有害とする論文とそうでない論文」の両方が存在している理由も自明となります。ちなみに日本人はもともと歯肉が薄いため、欧米人よりも矯正移動による歯肉退縮が起こりやすいといえるでしょう。

◎矯正力は3番目の咬合性外傷になり得る

綿引先生は今回のセミナーの中で「矯正力は3番目の咬合性外傷になり得る」という指摘もされています。適切な矯正力を与えたとしても、歯肉や歯槽骨の状態が悪ければ、骨が出来ずに歯根が露出する可能性も十分にあります。それはアライナーでもワイヤー矯正でも現実的に怒り得ることです。とくにボーンハウジングに起因する歯肉退縮と後戻りには十分注意する必要があるとのことでした。

矯正の移動の種類によって歯肉と歯槽骨の作り方は変わるのか?

北海道医療大学の札幌サテライトキャンパスのドアの写真

セミナーの2つ目のトピックでは「矯正の移動の種類によって歯肉と歯槽骨の作り方は変わるのか?」という論点にフォーカスしました。ここからは、綿引先生が専門とする歯周組織再生療法のお話も含まれてきます。

挺出と再生

まずは、矯正の基本的な移動の種類である「挺出(ていしゅつ)」についてです。挺出は、ゆっくりと慎重に行うことで骨がついてきます。その結果、GBRの量が少なく済んだり、補綴治療を有利に進めることができるようになったりします。矯正学的挺出を行って骨レベルを上げて、インプラント治療を有利に進めた症例の紹介もありました。
「矯正×歯周再生術(O-PRO)」を広汎型の重度歯周病を患った方に適応した症例で、目を疑うほど美しい治療結果が得られていました。その際、矯正移動のタイミングが与える影響についても言及されており、矯正移動のスピードと歯根吸収と組織再生量には密接な関連があるとのことでした。骨補填剤の種類によっても反応は変わってきます。

圧下と再生

続いて、圧下移動と再生の関係についてです。歯を垂直的に沈める処置を矯正では圧下(あっか)といいます。圧下を行うと、プラークが歯肉縁下に入り込むことから、歯周組織の再生が起こらないと考えられていますが、歯周組織再生療法を行った後に圧下にさせると結果が変わってきます。根尖方向の歯根膜・付着が広がり、正常に再生していくのです。綿引先生はこれを「圧下移動と再生の融合」と表現されていました。

まとめ

綿引淳一先生とのツーショット写真

綿引淳一先生とのツーショット

今回は、綿引淳一先生の「O-PROセミナー」の前半部分をご紹介させていただきました。矯正治療は歯肉退縮の原因となるのか。なぜ矯正移動が歯周組織に有害とする論文とそうでない論文があるのか。そうした矯正の世界では普遍的な論争となっているトピックについて触れた上で、「矯正×歯周再生術(O-PRO)」が果たす役割をお伝えできたかと思います。
とはいえ、今回のお話はまだまだ導入部分でしかありませんので、O-PROについてもっと詳しく知りたいという方は、是非とも後編もご覧ください。後編では、具体的な症例を取り上げながら、O-PROの真髄に迫っていきます。ブラックトライアングルへの各種対応法についても解説しております。

 
 

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