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第35回日本舌側矯正歯科学会学術大会に参加しました〈後編〉

京都タワーと京都駅周辺

第35回日本舌側矯正歯科学会学術大会に
参加しました〈後編〉

2024/02/07

京都タワーと京都駅周辺

みなさんこんにちは。総院長の東海林です。
2023年11月23日(木)に開催された第35回日本舌側矯正歯科学会学術大会・総会に参加してまいりました。

今回は学会レポートの後編として、私の一般口演「当院で行っているリンガルブラケット矯正法とIn Office アライナー型矯正装置を併用した矯正歯科治療」と当法人スタッフによるポスター展示の内容についてお伝えします。
>>前回「第35回日本舌側矯正歯科学会学術大会に参加しました〈前編〉」

渋谷矯正歯科総院長の講演の様子

発表時の様子

そもそもリンガルブラケット矯正法とは?

裏側矯正(リンガル矯正)のイメージ画像

最も標準的な矯正法では、歯列の表側にブラケットとワイヤーを固定します。
一般的には表側矯正やワイヤー矯正と呼ばれている方法で、見た目が悪い、汚れがたまりやすい、といった欠点があることから、審美面や衛生面における要望が高い患者さんに推奨することは難しいです。
そこで有用なのがブラケットとワイヤーを歯列の裏側に固定するリンガルブラケット矯正法です。

■リンガルブラケット矯正法のメリット

メリット1:装置がまったく見えない

リンガルブラケット矯正法の最大の特長は、審美性の高さです。
歯列の裏側に設置されたブラケット装置は、口を開けても見えることがありません。
つまり、周囲に気づかれずに矯正歯科治療を進めることが可能なのです。
この点は、透明な樹脂製のマウスピースを使うアライナー矯正よりも優れているといえるでしょう。
なぜならアライナーは至近距離で凝視した場合は、ほぼ間違いなく装置の存在を認識することになるからです。

メリット2:虫歯や歯周病リスクが低い

リンガルブラケット矯正法もデコボコとした複雑な装置を歯列に固定することに変わりはないのですが、舌側という位置関係上、唾液による自浄作用が働きやすくなっています。
その結果、細菌が繁殖にくくなるため、表側矯正よりも虫歯・歯周病リスクが低下するのです。

メリット3:舌癖による影響が少ない

舌で前歯を押しだす癖や舌突出癖は、前歯部の歯並びに大きな悪影響をもたらします。
舌側に装置が固定されているリンガルブラケット矯正では、そうした舌癖による影響が自ずと少なくなります。

■リンガルブラケット矯正法のデメリット

このように、リンガルブラケット矯正ではさまざまなメリットが得られるのですが、いくつかのデメリットを伴う点も忘れてはいけません。

デメリット1:費用が高い

表側矯正と舌側矯正の費用を比較した場合、どうしても後者の方が高くなってしまいます。
それは舌側矯正では専用のブラケットを使用するだけでなく、歯科医師には高度な技術を求められるからです。
そのため経済面に重きを置く患者さんには、舌側矯正ではなく、スタンダードな表側矯正を推奨した方が良いです。

デメリット2:歯磨きがしにくい

舌側の装置は、目で見て確認しながら歯磨きすることが難しいため、表側矯正よりも清掃性に劣ります。

デメリット3:しゃべりにくい

舌側矯正は表側矯正よりも発音障害が生じやすいです。
それはブラケット装置と舌が接触しやすいからです。
歯並びや装置の状態のよっては、口内炎もできやすくなります。

■術者としてのデメリット

ここまでは、舌側矯正における患者さんが被るデメリットを挙げてきましたが、術者としてのデメリットもいくつか存在しています。
私は臨床の現場でリンガルブラケット矯正に以下のようなデメリットを感じています。

  • 個歯トレーを用いたインダイレクトボンディングを行う必要がある
  • わずかな修正のためのブラケットのリポジショニングに労力を割かなければならない
  • 舌側面の形態やブラケット間の短さから、ワイヤーベンディングでの修正が複雑

つまり、リンガルブラケット矯正ではマイナーエラーの修正に熟練の技術や時間を要するのです。
そこで有益なのがアライナー型矯正装置です。

アライナー型矯正の特徴とメリット・デメリット

アライナー矯正(マウスピース)のイメージ画像

アライナー型矯正は、透明な樹脂製のマウスピース(アライナー)を患者さん自身に着脱してもらう治療法で、次に挙げるようなメリットが得られます。

■アライナー型矯正のメリット

【患者さんのメリット】
  • 歯の移動に伴う痛みが少ない
  • 口腔粘膜を傷つけにくい
  • 装置が目立ちにくい
  • 金属アレルギーのリスクがない
  • 歯根吸収が少ない
  • 清掃性に優れている
【術者のメリット】
  • 急患が少ない
  • チェアタイムが短い
  • 軽度の非抜歯症例をより早く治療できる可能性がある

■アライナー型矯正のデメリット

当然ですがアライナー型矯正にもデメリットを伴います。

  • 適応症がワイヤー矯正よりも狭い
  • 歯の移動様式が複雑
  • 患者さんのコンプライアンスへの依存度が高い
  • 微調整のためにアライナー型矯正装置を外注するとコストが高くなる

このように、リンガルブラケット矯正法とアライナー型矯正法にはそれぞれに異なるメリットとデメリットを伴うことから、必ず不便を感じる場面が出てくるのです。
そんな2つの矯正法のデメリットを可能な範囲で排除し、メリットの部分を最大限享受できるようにしたのが「リンガルブラケット矯正法とIn Office アライナー型矯正装置を併用した矯正歯科治療」なのです。

渋谷矯正歯科総院長の講演後の写真

発表後の1枚。たくさんの方の前で発表ができ、
とても充実した機会でした。

リンガルブラケット矯正法とアライナー型矯正装置の併用

近年は、CAD/CAMの進化によって、院内でのアライナー型矯正装置の製作を安価に行えるようになりました。
もちろん、ソフトウェアと3Dプリンターを導入する際には初期投資として高額な費用がかかりますが、その後はアライナー1枚あたり数百円で製作できるようになります。
アライナーの製作プロセスも従来型と比較すると簡素化することが可能です。

■アライナーの製作プロセス

◎従来型(企業に外注)
  1. STEP1:SCAN
  2. STEP2:治療計画の立案
  3. STEP3:デジタルでの排列
  4. STEP4:承認
  5. STEP5:3Dプリンターでの模型製作
  6. STEP6:アライナー製作
  7. STEP7:アライナーの郵送および受け取り
◎In Office アライナー
  1. STEP1:SCAN
  2. STEP2:デジタルでの排列
  3. STEP3:アライナー製作

当院では、このIn Office アライナーをリンガルブラケット矯正法のディテイリングの際に併用したところ、治療期間の短縮と緊密な咬合を得ることができました。
さらには、後段でも解説する「患者さんのQOLの向上」にも寄与したのです。
今後は、リンガルブラケット矯正法とアライナー型矯正装置の長所をさらに活かして、より質の高い医療を提供していきたいと考えております。

患者QOLの比較調査

今回の学会では「舌側矯正装置とアライナー型矯正装置における患者QOLの比較調査」についてポスター展示させていただきました。
結果だけをかいつまんで報告すると、アライナー型矯正装置による治療期間中は舌側矯正装置による治療期間中に比べてQOLとモチベーションが高かったことがわかりました。
これは装置による疼痛の減少やマルチブラケット装置の脱離等を心配する必要がなくなった点が要因であると考えられます。
また、来院頻度の減少と処置時間の短縮によって、予約が取りやすくなった点も患者さんにはメリットに感じられたことかと思います。

渋谷矯正歯科スタッフによるポスター展示の学会発表
渋谷矯正歯科スタッフによる学術大会のポスター展示

まとめ

今回の学会では、いろいろな分野の先生のお話を聞くことができ、大変勉強になりました。
また、私自身が発表する場もいただけたため、改め自分が行っている治療の意義について深く考えることができました。

人前で自分の治療や研究の成果を発表するのはとてもいい。
自分の意見を多くの人に理解してもらうためには、わかりやすい言葉を選ぶだけではなく、新しい知識も入れなきゃいけない。
それは自分の成長にもつながることなので、今後も定期的に発表は続けていきたいと思います。
ポスター展示をしたスタッフも良い刺激になったのではないでしょうか。
今後は若い先生にも積極的に発表していってもらいたいです。

学術大会後の親睦会

学術大会総会参加後の親睦会にて1枚。
京都の素敵なお店で交流を深めました。

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