「日本顎変形症学会総会・学術大会」に
参加しました〈前編〉
みなさんこんにちは。総院長の東海林です。
先日「日本顎変形症学会総会・学術大会」に参加してまいりました。
今回のテーマは「現在から未来へ 顎変形症治療のこれから」ということで
また新しい知見を得ることができました。
今回は1日目に聴講した内容から気になるトピックをお話させていただきます。
■アンカースクリューによる顎変形症治療のパラダイムシフト
まずは午前中の「アンカースクリューによる顎変形症治療のパラダイムシフト」です。
アンカースクリューの使用で今まで考えられなかったような歯の移動が実現し、
矯正治療は進化し続けています。
今回のたくさんの先生方のアンカースクリューを使った治療症例や見解を知ることができました。
今後渋谷矯正歯科でもアンカースクリューを有効活用して、
患者様にとってより良い治療を行っていきたいなと思っております。
ではまずアンカースクリューについて説明いたします。
■アンカースクリューとは?
矯正歯科におけるアンカースクリューとは、チタン製の小さなネジで、歯ぐきの骨の部分に埋め込んで、歯を動かす際の固定源とする矯正器具のことです。
別名「インプラント矯正」とも呼ばれますが、通常の欠損したところに入れるインプラントと違い、矯正終了後に除去します。
アンカースクリューを用いることで、これまでは難しいとされていた歯の動かし方や、治療期間の短縮などが可能となります。アンカースクリューは埋め込む位置や方向によって上下左右どの方向からも歯を引っ張ることができるため、治療の幅が飛躍的に広がります。
■アンカースクリューを用いるメリットとデメリット
メリット
・治療期間が短くなる
・非抜歯で治療できる可能性が上がる
・開咬やガミースマイルなどの改善が可能
・強固な固定源を得られる
・患者さんの負担軽減につながる
デメリット
・麻酔が必要
・外れることがある
・子どもには適用できない
■アンカースクリューを用いた治療の流れ
アンカースクリューを用いた治療の流れは以下のようになります。
- 精密検査を行って、アンカースクリューを埋め込む位置や方向、数などを決める。
- 部分麻酔をして、歯ぐきに小さな穴を開けて、アンカースクリューを埋め込む。
- 様子を見てアンカースクリューに矯正装置やゴムを取り付け、歯に力をかける。
この時、アンカースクリューが動かないように注意する。 - 定期的に通院して、歯の動きやアンカースクリューの状態をチェックする。
必要に応じて力の調整やアンカースクリューの入れ替えを行う。 - 矯正治療が終了したら、アンカースクリューを抜く。抜いた穴は自然にふさがる。
■上下顎移動術における上顎骨位置決めの最新知見
続けて午後にはこちら「上下顎移動術における上顎骨位置決めの最新知見」というテーマで様々な話や症例を見て学んでまいりました。
こちらも実に勉強になることばかりで興味深い内容でした。
顎骨移動術の場合、基本的には動きの自由度が高い下顎のみを移動させることが多いです。
上顎は動かさず基準を決めて、下顎骨を移動させることは比較的容易なのです。
しかし上下顎移動となるとどうでしょう。上顎も動いてしまうとどこに位置決めをするのか不正確になってしまいます。そのため上顎骨を後退というのは難易度が高いのです。
しかし現在はコーンビームCTの登場により上顎基準でも位置決めをすることが可能になり上下移動術はかなり進化を遂げております。
今回はまるで神業のような症例を沢山拝見しまして、顎変形症治療への未来は明るいことを目の当たりにしました。
では上下顎移動術についても説明します。
■上下顎移動術とは?
上下顎移動術とは、上あごや下あごの骨を切って位置を変える外科的な矯正法です。
歯列矯正だけでは改善できない場合に行われます。例えば、以下のような症例に適用されます。
- 出っ歯(上顎前突):上あごが前に突き出ている
- 受け口(下顎前突):下あごが前に突き出ている
- しゃくれ(下顎後退):下あごが後ろに引っ込んでいる
- 口ゴボ(上下顎前突):上下のあごが共に前方に突き出ている
- 顔面非対称:左右のあごの位置や大きさが不揃い
上下顎移動術は、見た目の美しさだけでなく、噛み合わせや発音などの機能性も改善する効果があります。
また、精神的なストレスやコンプレックスを解消し、自信や明るさを取り戻すこともできます。
■上下顎移動術の種類と手順
上下顎移動術には、上あごだけを移動させる「上顎骨体移動術」と、下あごだけを移動させる「下顎骨体移動術」と、上下両方のあごを移動させる「上下顎骨体移動術」の3種類があります。
それぞれの一般的な特徴と手順を簡単に説明します。
当院では外科矯正に関してはサージェリーファーストという治療方法も可能です。
そのため手順は手術に特化して説明いたします。
・上顎骨体移動術(ルフォー1型骨切り術)
上顎骨体移動術は、極端な出っ歯や上あごが突き出ている場合に行われます。
上あごの骨を後方に引っ込めることで、Eライン(美しい横顔の基準)を整えます。
・下顎骨体移動術(下顎枝矢状分割術)
下顎骨体移動術は、受け口やしゃくれなど、下あごが前に突き出ている場合に行われます。
下あごの骨を後方に引っ込めることで、Eラインを整えます。
・上下顎骨体移動術
上下顎骨体移動術は、口ゴボや上下両方のあごが前方に突き出ている場合に行われます。
上下のあご(口元全体)の骨を後方にバランスよく引っ込めることで、Eラインを整えます。
上顎骨体移動術と下顎骨体移動術を併用して行われます。
・上下顎移動術のメリットとデメリット
メリット
・噛み合わせや見た目の根本的な改善が期待できる
・口腔機能や発音の改善が期待できる
・精神的・心理的なストレスやコンプレックスを解消できる
・社会生活や人間関係の向上が期待できる
デメリット
・手術には全身麻酔と入院が必要で、費用も高額になる
・術後は腫れや痛みがあり、食事や会話が困難になる
・歯冠空隙が生じる場合があり、補綴治療が必要になることもある
・術中や術後に出血や感染、神経損傷などの合併症が起こる可能性がある
■上下顎移動術の手順
上下顎移動術は、基本的には以下の手順で行われます。
- 麻酔:全身麻酔をかけて手術を行います。
- 切開:口腔内や口腔外から粘膜や皮膚を切開します。
- 骨切り:上あごや下あごの骨を特殊な器具で切ります。
- 骨移動:切った骨を目的の位置に移動させます。
- 骨固定:プレートやネジで移動した骨を固定します。
- 縫合:切開した粘膜や皮膚を縫合します。
なお、術式によって順序や詳細は変わります。
■上下顎移動術の回復期間
上下顎移動術は大掛かりな手術なので、回復期間は長くかかります。
以下のような点に注意しながら、経過観察やアフターケアを行う必要があります。
・入院期間
手術後は3~5日間程度入院します。その後は自宅で安静に過ごします。
・食事制限
手術後は液体食や柔らかい食事を摂ります。噛む力が回復するまでは硬い食べ物は避けます。
・口腔ケア
手術後は口腔内が不潔になりやすいので、消毒液でうがいをしたり、歯ブラシやデンタルフロスで歯磨きをしたりします。
・薬物治療
手術後は痛み止めや抗生物質などの薬を処方されます。副作用やアレルギーに注意しながら服用します。
・リハビリ
手術後は口を開けたり閉じたりする動作が困難になることがあります。医師の指導のもとで口腔筋のリハビリを行います。
渋谷矯正歯科では矯正をご検討されている方にはそれぞれに合った方法を一緒に模索しながら、
一つ一つ詳しくご説明いたします。ご質問などもお気軽にどうぞ。
では次回は二日目の様子をレポートいたします。お楽しみに。
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