第31回日本成人矯正歯科学会
函館大会に参加しました〈前編〉
こんにちは。総院長の東海林です。
6月に第31回日本成人矯正歯科学会函館大会に参加してまいりました。
今回のテーマは「これからの矯正歯科の方向性について」(矯正歯科分野のCAD/CAMの現状と未来)です。
大会ではアライナー矯正についての見解や歯科矯正におけるデジタル化についてなどの演題を聴講してまいりました。
渋谷矯正歯科ではいち早くデジタル化を取り入れ、最先端の治療を行ってきておりますのでとても興味深い内容が多く取り上げられておりました。
そこで今回は、デジタルデンティストリー、つまり歯科医院のデジタル化についてお話します。
■デジタルデンティストリーとは?
デジタルデンティストリーとは、歯科診療におけるデジタル技術の活用を指します。
具体的には、以下のようなものがあります。
・口腔内スキャナー
口腔内を高精度に撮影し、3D画像を生成する装置です。従来の型取りに比べて、患者さんの負担が少なく、時間も短縮できます。こちらは矯正でも大活躍します。
・CAD/CAM
コンピュータ支援設計・製造の略で、口腔内スキャナーで得られた3D画像をもとに、歯列模型や補綴物(被せ物や入れ歯など)をコンピュータ上で設計・製作するシステムです。煩雑な作業も減り高品質で精密な補綴物をよりスピーディーに製作できます。
・3Dプリンター
CAD/CAMで設計された歯列模型や補綴物をレジンやセラミックなどの材料で層状に積み重ねて造形する装置です。アライナー矯正のマウスピースも製作できます。従来の技工所に依頼するよりもコストや時間が削減できます。
■デジタルデンティストリーのメリット
患者様にとっては、口腔内スキャナーで型取りが不要になることや、CAD/CAMや3Dプリンターで補綴物が即日で提供できるようになったとされることなどが嬉しい点です。また、AIによる解析やシミュレーションで治療前後のイメージも分かりやすくなります。
歯科医師にとっては、口腔内スキャナーやCAD/CAMなどのデジタル技術で治療効率や精度が向上することや、AIによる診断や治療計画の支援で臨床判断が容易になることなどが有利な点です。また、デジタルデータは保存や共有が容易であり、患者さんとのコミュニケーションや他院との連携もスムーズになります。
歯科技工士にとってもメリットがあり、CAD/CAMや3Dプリンターで補綴物の製作が自動化されることや、AIによる設計のサポートが行われることなどが効率的で良い点です。また、デジタル技術により、より高度で精度の高い補綴物の制作が可能になります。そして、従来の技工は様々な材料で汚れやすかったところがデジタル化によって綺麗に過ごせて嬉しいといった声もあります。
■デジタルデンティストリーを活用した治療
・マウスピース矯正
マウスピース矯正では口腔内スキャナーで得られた3D画像をもとに、コンピュータで矯正計画を立て、3Dプリンターで透明なマウスピースを製作します。この際に歯並びのゴールをビフォーアフターで見ることができるという点でもデジタルデンティストリーの一つと言えます。
・インプラント
インプラント(人工歯根)を埋め込む際に、口腔内スキャナーやCTなどで得られた3D画像をもとに、コンピュータでインプラントの位置や角度をシミュレーション。ガイドプレートやサージカルユニットなどのデジタル装置を用いて正確に埋め込むために活用されます。
■矯正治療におけるデジタル化
矯正治療におけるデジタル化についてもう少し掘り下げていきます。矯正治療に関してもコンピュータやネットワークなどの情報技術を活用して、診断、治療計画、装置製作、治療シミュレーションなどを効率化し、治療の質そのものを向上させています。
・治療シミュレーションでの活用
口腔内スキャナーやCT撮影などで得られた3次元データは、歯や骨の形態や位置関係を正確に把握し、患者様に分かりやすく説明することができます。渋谷矯正歯科でもいち早くシミュレーションを患者様とのコミュニケーションツールの一つとして活用しております。
一般的にマウスピース矯正に限られると思われていますが、当院では舌側矯正の場合もシミュレーション可能ですので、お気軽にご相談ください。
・患者様の負担減
デジタル化によって各工程を早く、正確に進めることが可能になり、治療スピードと質の両方を向上させることができます。また、来院回数や治療期間も減少することが期待できます。
3次元データを基にコンピュータ上で歯列の移動や回転などをシミュレーションし、最適な治療計画を立てた後はそのままデータを送ってすぐに技工へ入ることができます。ワークフローの効率化は歯科医師や歯科技工士だけではなく患者様にとっても良い点があるのです。
■矯正の種類ごとのデジタル化活用
マウスピース型矯正
口腔内スキャナーで取得した歯列データを基にCAD/CAMで製作した透明なマウスピース型の装置(アライナー)を制作します。代表的なものにインビザラインがあります。
裏側矯正
同じく口腔内スキャナーで取得したデータを元にCAD/CAMで製作した金属製のブラケットやワイヤーを歯の裏側に装着して歯列を整える方法です。裏側矯正は特に技術的に難しい治療方法なので事前に設計を行うことで精度が上がります。インコグニートやハーモニーなどが代表的なブランドです。
■三次元診断とは
もう一つ、CTを導入して矯正治療における三次元診断についてもお話します。
三次元診断とは、歯科用コーンビームCT(CBCT)や口腔内スキャナー(IOS)などのデジタル機器を用いて、患者さんの口腔内を高精度に撮影し、3D画像を生成することです¹。従来のレントゲンや歯型採取では二次元のデータしか得られませんでしたが、三次元診断では骨や歯根などの肉眼では見えない部分も詳細に把握することができます。また、コンピュータで3D画像を操作して、様々な角度から観察したり、シミュレーションしたりすることが可能です。
・三次元診断のメリット
患者様にとっては、口腔内スキャナーで歯型採取が不要になることや、CBCTで低線量で撮影できることなどが嬉しい点です。また、3D画像で治療前後のイメージが分かりやすくなります。
歯科医師にとっては、CBCTやIOSで得られた3D画像をもとに、より正確な診断や治療計画を立てることができる点です。また、デジタルデータは保存や共有が容易であり、患者さんとのコミュニケーションや他院との連携もスムーズになります。
■まとめ
デジタルデンティストリーには、患者さん、歯科医師、歯科技工士のそれぞれにメリットがあり、日々進化しております。これにより,個々の患者のニーズや特徴に応じたオーダーメードな治療が可能になっていくでしょう。また,データの共有や活用により,歯科医院や歯科技工所間の連携も向上していきます。今後も積極的に勉強し続けようと思います。最後に今回学会で少し残念だったことをひとつ。
今回学会が函館市で行われ、本来は函館市長が挨拶に来る予定でした。函館市長と言えば大泉潤さん。そう、あの大泉洋さんのご兄弟です。なかなかない機会なのでちょっとお会いしてみたかったですね。
しかしそのあとには歯科とは一見関係なさそうな内容ではありますが口元は表情につながりがあり関連がある、ということで「記号的絵画における表情の普遍性と特殊性」というゴルゴ13などの漫画の表情を絡めたお話等もありました。
このように歯科以外のジャンルからのお話は視野が広がります、面白い講演でした。
学会はいつも新しい発見の連続ですね。次回も引き続き日本成人歯科矯正学会のレポートが続きます。お楽しみに。
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